私たちは日々の暮らしの中で、さまざまな「リスク」と隣り合わせに生きています。
交通事故や災害、体調不良や人間関係のトラブル——そうした不測の事態が起きないように、私たちはいろいろな「備え」をしています。
けれど、どんなに気をつけていても、事故やトラブルは起きてしまう。
なぜでしょうか。
そんな疑問に答える考え方のひとつに、「スイスチーズモデル」という理論があります。
これは、事故や失敗を“穴だらけのチーズ”に例えて説明するものです。
チーズの穴は、「ちょっとしたミス」や「注意不足」「慣れ」「思い込み」など、さまざまなエラーを象徴しています。
チーズ(=対策)を何枚も重ねていれば、ふつうは穴はふさがれて事故にはなりません。
でも、たまたまその穴が一直線に並んでしまったとき、大きな事故が起こることがあるのです。
私たちの暮らしや仕事も、まさにこのチーズのようなものかもしれません。
たとえば、朝寝坊した日に限って大事な忘れ物をし、さらに電車が止まり、会社に遅刻して上司に怒られる……。
どれも一つひとつは小さな“穴”でも、重なってしまえば一大事になります。
このモデルが教えてくれるのは、「ミスは誰にでもある」ということ、
そして「だからこそ、複数の備えや、支え合いが必要だ」ということです。
ここでもう一つ、大切な考え方があります。
それが、「レジリエンス」、つまり「しなやかな強さ」です。
スイスチーズモデルが「どう防ぐか」を教えてくれるとすれば、
レジリエンスは「起きてしまった後、どう立て直すか」を教えてくれます。
完全な安全、完璧な対策など、この世には存在しません。
どれだけ準備をしても、想定外のことは起こる。
それでも、「起きてしまった後にどう対応できるか」「どう立て直せるか」が、組織や人間の本当の力なのだと思います。
しなやかさとは、折れずに戻る力。
しなっても元に戻る、あるいは、前よりも強くなって戻る力。
自分のまわりには、どんな“穴”があるだろう。
誰かのミスを、自分はどこまでカバーできるだろう。
何かが起きたとき、自分はしなやかに対応できるだろうか。
そんな問いを、急がずに持ち続けること。
それ自体が、私たちの生活や仕事を、少しずつ安全で豊かなものにしていくのかもしれません。
文:caritabito