城下の賑わい

秋の空に、雲が薄く流れていた。岡山城の下の段広場では「集え!岡山城」の幕が揺れ、
おもてなし武将隊の威勢のよい掛け声が響いている。鎧の鈴音、太鼓の音、子どもたちの歓声。
城下町の一角が、まるで時代を遡ったかのような熱気に包まれていた。

本段へ向かう

演武の時間が近づくと、観衆の波がゆっくりと本段へと流れていく。
石段の途中で振り返ると、岡山城の黒い天守が秋の陽を反射して光っていた。
その静けさの奥に、これから響く「火薬の音」を思い、胸の奥がわずかに高鳴る。

鉄砲隊、登場

備州岡山城鉄砲隊の隊員たちが整列する。
鎖帷子に身を包み、銃口を斜めに構えた姿は、まさに戦国の兵そのものだった。
号令とともに、銃口が一斉に前を向く。観客の息が止まる。

乾いた轟音が響き、白煙が一瞬にして空を覆う。
わずかな風が煙を裂き、太陽の光が差し込むと、硝煙の中に鉄の影が揺れていた。
その瞬間をシャッターに収めながら、
「これが火縄銃の音か」と、胸の奥に響く低い振動を感じていた。

百匁火縄銃

続いて、大筒が運び込まれる。鉄砲隊の手にかかると、
まるで生き物のようにずしりと構えられた。
「ドン!」という地を這うような爆音。
反動で銃口が空を仰ぎ、煙が渦を巻く。
観衆から思わずため息が漏れた。
その音は、胸の奥にまで響き、
時代の境目を撃ち抜くようだった。

棒火矢

演武が終わると、静かに展示の時間が始まった。
黒い木箱の中には、棒火矢が収められている。
記事の切り抜きには「幕末のロケット弾」とある。
細工は精緻で、矢の根元には縄が巻かれ、火薬を装填する仕組みが隠されている。
炎と技術、その狭間に人の工夫が息づいていた。

火蓋

火縄銃の火蓋が開かれていた。
小さな金属の蓋をそっと上げると、火薬皿が現れる。
そこに火縄の火が落ちれば、すべてが始まる。
――「火蓋を切る」。
この言葉は、単なる比喩ではない。
生と死の境を踏み出す一瞬の所作。
写真越しに、その静かな緊張を感じていた。

結び

演武の余韻が、城下の風に溶けていく。
耳の奥にはまだ、あの轟音が残っていた。
火縄の煙の匂いと、秋草の青い香りが混ざり合い、
過ぎ去った時間が、今もここにあるように感じられた。
――火は過去のものではない。
それを伝えようとする人がいる限り、
火の記憶は、いつの時代にも生きている。

文:caritabito