日本人の研究者が二人、続けてノーベル賞を受賞した。
坂口志文氏(生理学・医学賞)と、北川進氏(化学賞)。
それぞれが異なる分野で世界を変える発見を成し遂げたが、
記者会見で語った言葉には、不思議な響きの共通点があった。

坂口氏の言葉は「一つ一つ」。
北川氏の言葉は「幸運は準備された心に宿る」。

派手さはない。
だが、そこにあるのは、どちらも継続する人の静かな強さだ。

一つ一つ ― 積み重ねの力

坂口氏が制御性T細胞を発見するまでには、
数十年にわたる地道な実験の繰り返しがあったという。
最初の成果がすぐに認められることはなく、
時には周囲の懐疑にさらされながら、
それでも淡々と手を動かし続けた。

彼の「一つ一つ」という言葉は、
結果ではなく過程を信じる人の言葉である。
「焦らず、比べず、諦めず」積み上げていく力。
それは科学者だけでなく、どんな職業にも通じる生き方だ。

キャリアの道のりでも同じことが言える。
自分の成長が目に見えないとき、
やっていることが正しいか分からないとき、
結局、最後に残るのは「一つ一つ」積み重ねた時間だ。

幸運は準備された心に宿る ― チャンスをつかむ感性

一方、北川氏は会見で、パスツールの言葉を引用した。
「幸運は準備された心に宿る」。
偶然の発見とは、ただの偶然ではない。
知識と経験、そして“気づく感性”を磨いてきた人だけが、
偶然を幸運に変えられる。

キャリアの世界でも、似たことが起きる。
たとえば突然の異動、思いがけない出会い、予想外の課題。
それらを「チャンス」と感じ取れるかどうかは、
その人の心がどれだけ準備されているかにかかっている。

準備とは、勉強だけではない。
失敗を咀嚼し、経験を引き出しに変えること。
日々の仕事を、未来への布石と見ること。
それが“準備された心”を育てていく。

二つの言葉が交わる場所

「一つ一つ」と「準備された心」。
この二つの言葉は、まるでキャリアの両輪のようだ。

一つ一つ積み重ねることが、
やがて準備された心をつくる。

そしてその心が、新しい機会をつかむ力になる。

目の前の一歩を丁寧に歩むことと、
その歩みを未来に備えること。
その循環が、成長を生み、キャリアを豊かにしていく。

文:caritabito

投稿者

caritabito

キャリアエッセイ『一つ一つ、準備された心へ ― 二人のノーベル受賞者の言葉 ―』件のコメント

  1. あとがき
    二人のノーベル賞受賞は、偶然ではない。
    だが、その「偶然」を味方につけられたのは、
    長い年月をかけて心を準備してきたからだ。
    キャリアもまた、偶然の連続だ。
    けれど、そこに意味を見出す力は、自分の中にある。
    坂口氏の「一つ一つ」と北川氏の「準備された心」。
    その二つの言葉は、働くすべての人への贈り物のように響く。

    caritabito

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