災害や事故のニュースに触れるたびに、「未然に防ぐ力」の大切さを思います。
それは決して派手ではなく、日常の中に溶け込む小さな積み重ねです。

アメリカンフットボールというスポーツには、「オフェンスライン(OL)」と呼ばれるポジションがあります。試合を見ていても、彼らが目立つことはほとんどありません。ボールを持つこともなければ、得点をあげるわけでもない。ただひたすらに、相手の突進を受け止め、味方を守り、地味で泥臭い仕事をこなす。

けれど実は、彼らがどれだけ踏ん張れるかで、試合の流れが変わることもあります。そんな彼らを讃える言葉として使われるのが、「アンサング・ヒーロー(unsung hero)」という表現。つまり、“讃えられることのない英雄”です。私はこの言葉が、とても好きです。

職場でも、家庭でも、地域でも、たいていの場所にはアンサング・ヒーローがいます。派手に評価されることはないけれど、誰かのために気を配り、整えて、支えている人たち。朝早くから職場を清掃している人。何も言わずに備品を補充してくれる人。壊れそうな空気をそっと和らげる人。

安全という視点でいえば、こうした見えない努力はさらに大切です。事故を未然に防ぐために点検を怠らない人。小さなヒヤリを共有して、同じ失敗を繰り返させない人。誰かが気づかない細部に目を向け、声をかける人。そんな静かな積み重ねが、安全を守る土台をつくっています。

今は10月。秋祭りの準備に追われる裏方の人たちや、運動会で子どもたちの安全を見守る保護者や先生も、まさにアンサング・ヒーローといえるでしょう。にぎやかな表舞台の陰で支えてくれる人がいるからこそ、安心して楽しむことができるのです。

けれど、そうした存在には往々にしてスポットライトが当たりません。評価制度や業績指標には乗りにくい、でも欠かすことのできない仕事。だからこそ、ふと立ち止まったときに「ありがとう」と言える人間でありたいと思うのです。

気づかれない努力に気づけること。
語られない価値に心を寄せられること。
それもまた、社会を支える静かな力です。

あなたのすぐそばにも、きっと誰かのアンサング・ヒーローがいるはずです。
そして、もしかしたら、あなた自身も。
その気づきこそが、新しい光を生むのかもしれません。

文:caritabito