村の広場には、朝の光が差し込み、草の露がまだ輝いていました。そこに二人の若者が並んで立っています。
一人は「やり投げ」の青年。
彼の眼差しは遠くを見据え、風の流れや太陽の高さまでも感じ取ろうとしています。彼の手に握られた一本のやりは、ただの道具ではなく、日々の努力と誠実さの象徴でした。地面を蹴るときの姿勢、振りかぶるときの呼吸、放たれる瞬間の静かな集中。やりが宙を切り裂く音は、まるで未来に向けた祈りのように響きました。
もう一人は「投げやり」の青年。
彼の眼差しは曇り、心は近くの小石にさえつまずくようでした。与えられたやりを雑に握り、「どうせ届くはずもない」と呟きながら、肩をすくめます。彼にとって投げることは、試みることでも祈ることでもなく、ただ退屈を追い払う仕草にすぎませんでした。やりは力なく宙を舞い、谷底の闇へ消えていきました。
その年、村を隔てる深い谷を越え、向こうの山へ使者を送らねばならない日がやってきました。谷はあまりに広く、橋を架ける力も資材もない。そこで村人は、やりを投げて谷の両岸を結ぶしかありませんでした。
「やり投げ」の青年は胸に手を当て、これまでの日々を思い出しました。汗で濡れた練習の日々、失敗してもあきらめず、少しずつ距離を伸ばしてきたあの時間。彼は大地を強く蹴り、腕を大きく振りかぶり、空に向けてやりを解き放ちました。やりは青空を裂いて飛び、やがて向こう岸の岩に深く突き刺さりました。歓声が谷にこだまし、使者の道が拓かれたのです。
「投げやり」の青年は順番が回ってきても、ため息をつくだけでした。彼の投げたやりは、半ばで力尽き、岩に届かぬまま谷の底へ消えていきました。その後、彼の名を覚えている者は少なく、ただ「投げやりな態度は、道を閉ざす」という戒めだけが語り継がれました。
文:caritabito