3日目の宿泊地は、山口県の西部、日本海に面した豊浦町の海辺にあるRVパークだった。下関市の北端に位置し、角島大橋や元乃隅神社などの名所にもほど近いこのエリアは、自然と歴史が溶け合う静かな町だ。
RVパークの前には、日本海の広大な水平線が広がっていた。遠くには島影もなく、視界を遮るもののない海は、空と地平の境界があいまいになるほど。午後の陽射しを受けて、海面はまるでガラスのようにきらめいていた。
潮騒がさざ波となって打ち寄せる音を背景に、時折カモメの鳴き声が響く。海の匂いと風のやさしさに包まれて、ここが旅の中継地点であることを忘れてしまいそうなほどだった。
受付で迎えてくださったスタッフの方は、朗らかな笑顔とさりげない心配りが印象的な方だった。夕方にも、そして翌朝もお見かけして、勝手ながら「オーナーさんだろう」と思い込んでしまったほど。
お話ししてみると、なんと私と同じ昭和38年生まれ。しかも、まだ誕生日が来ていないから「61歳です。ここ重要!」と後日メッセージをいただき、思わず笑ってしまった。さんぱち仲間。こういう出会いがあると、旅はぐっと温かみを帯びる。

屈託のない笑顔に、こちらも自然と笑みがこぼれる。「今日は空いてますから、どこに停めてもいいですよ」と勧められたので、私たちはキャンピングカーを海に向けて停めた。オーニングを広げ、椅子とテーブルを出して、夕陽の撮影に備えて三脚も立てる。
この日、まわりには他の利用者も数組いた。家族連れは屋外でバーベキューを楽しんでおり、もう一人、自転車でふらりと訪れた人物がいた。年齢はよくわからない。旅慣れた様子と、ひょうひょうとした空気をまとったその人からは、時間に縛られない自由な暮らしぶりがにじみ出ていた。

夕陽を待ちながら、RVパークの食堂でいただいた山口名物・瓦そばとお刺身の夕食。
器は陶製ながら、茶そばの香ばしさと具材の彩りがしっかり主張していて、美味。
旅の空腹と疲れに染み渡る、やさしいひと皿でした。

夕日が沈むのは午後7時半。少し早めに食事を終え、7時10分ごろから海辺で撮影のスタンバイに入った。カメラを三脚に据え、設定を整えたら、あとはその瞬間を待つだけ。
この“待つ時間”こそ、写真撮影の醍醐味のひとつだと感じる。風の音に耳を澄ませ、雲の流れを目で追い、空の色がわずかに変化していくのを見守る。誰に急かされるでもなく、ただじっと光の変化と向き合う時間。旅の中で、こんなに静かで贅沢な時間はそう多くない。

この日は雲が厚く、赤く染まる夕焼けは望めないかと半ば諦めていたが、日没直前、雲の切れ間から太陽が顔を覗かせた。静かに、確かに、地平線の向こうに沈んでいく姿を、ファインダー越しに見届けることができた。

夕日が沈んだ後も、空には余韻が残る。オレンジから藍色へ、深く溶けていくようなグラデーションが美しく、時間を忘れて見入ってしまう。やがて沖合にはイカ釣り漁船の漁火が灯り、10隻ほどの光が水面に揺れていた。ふと空を見上げると、それよりもはるかに多くの星たちが、夜の始まりを告げるように瞬いていた。
文・写真:caritabito