今回の旅の二日目、阿武町にある惣郷川橋梁(そうごうがわきょうりょう)を訪れた。日本海を背景に鉄橋を列車が走る光景は、写真愛好家の間でも知られた名所で、私たちにとっても今回の旅の目的のひとつだった。

この鉄橋を走る山陰本線は、列車の本数が非常に少ない。さらに「夕日と列車」がちょうど交差するのは、春や秋のごく限られた時期だけ。今回はその“奇跡のタイミング”にはあたらないと分かっていたため、あえてその組み合わせを狙わず、昼の風景に焦点を当てることにした。

訪問したのは7月20日。太陽が高く昇る正午前後の時間帯。国道から集落を抜ける道を進み、橋梁近くの広場に車を停めた。目の前に現れた惣郷川橋梁は、思っていた以上に巨大で力強く、青く広がる海との対比がなんとも美しい。

ただ、現地に着いて初めて分かったこともあった。現在、橋梁の橋脚ではメンテナンス工事が行われており、ネットや配管、作業用の車両や重機が設置されていたのだ。全景を撮ろうとするとどうしてもそれらが映り込んでしまうため、今回はあえて構図を絞り込み、工事設備が入らないアングルで撮影を行った。結果として、鉄橋の全体像を収めることはできなかったが、海を背景に列車が走る一瞬を写しとることができた。

メンテナンスは来年2月まで続く予定だという。いつかまた、夕日と列車と鉄橋が重なる春か秋の午後、完璧な一枚を撮るために再訪したい。そのときには、この場所が見せてくれる本当の“奇跡のタイミング”に出会えるかもしれない。

静けさの中を、ひときわ高らかに響く列車の音。それは、昼の海風とともに、忘れがたい余韻として胸に残った。

惣郷川橋梁での撮影を終えた私たちは、次の目的地である萩へと車を走らせた。いくつかのトンネルを抜けた先、突然視界が開け、コバルトブルーの海が目前に広がった。北長門海岸国定公園のエリアに差しかかっていた。

思わず車を停め、ドアを開ける。潮風が吹き込み、目の前の風景に心を奪われる。青く澄んだ海と、ゆるやかに波打つ浜辺、そして夏の陽光が白くきらめく。カメラを構えながら、ただこの場所に立っていることが贅沢に思えた。

再び車を走らせ、しばらく進んだところで「道の駅阿武町」に立ち寄ることにした。ここは単なる道の駅ではない。RVパークを併設し、隣接するキャンプ場、さらには温泉施設まで備えた、旅人にとって至れり尽くせりの場所だ。

施設内には木のぬくもりを感じるデザインのカフェがあり、私たちはそこでひと息ついた。窓からは海が見え、観光客だけでなく地元の人々も集う様子があたたかい。アイスコーヒーを片手に、さっき撮ったばかりの写真を見返しながら、ここでもまた「旅の途中」という時間を実感する。

ひとしきり休憩を終えた私たちは、再び西へ向かう。次なる目的地・萩の町には、もうすぐ手が届く。

文・写真:caritabito